2018.12.20(木)
外山大輔『ミネルヴァよ、風を起こせ』公演 千秋楽
最近の劇場公演は既存の曲を組み合わせて新たな演目が作られていることも多く、この公演もそのうちのひとつですね。そもそも劇場公演の演目というのは曲を通して聴くとそれぞれが一貫したメッセージやテーマを持っているように思うのです。ゆえにそれを壊して新たな演目を作り上げるのは難しいことなのでしょう。何とは言いませんけどただ天気に関係する曲を集めただけじゃそりゃ批判の声は多いわけですよ。それに対してこの公演はセトリを見たときからとてもワクワクでした。一度観てみたいと思っていたところに千秋楽のお知らせがきて、悲願の当選。単純に僕の好きな曲がたくさんあるんですよね。以降解説じみたことをつらつらと書きます。
出演メンバー
後藤萌咲・向井地美音・市川愛美・込山榛香・武藤十夢・茂木忍・湯本亜美・久保怜音・佐々木優佳里・谷口めぐ・中西智代梨・福岡聖菜・大森美優・川本紗矢・村山彩希・清水麻璃亜(群馬県)
セットリスト
☆:センター ★:外山大輔作曲
M00 . overture(外山remix.ver.)
M01 . 重力シンパシー
M02 . ゼロサム太陽
M03 . 私たちのReason
M04 . ラベンダーフィールド
MC1
M05 . ★コップの中の木漏れ日(☆村山・福岡・込山・清水・久保・川本・中西)
M06 . オフショアガール(市川/BD:武藤(小)・鈴木・道枝・佐藤)
M07 . 夢でKiss me!(向井地/親衛隊:込山・村山・久保・川本・清水)
M08 . 口移しのチョコレート(☆佐々木・茂木・湯本)
M09 . おしべとめしべと夜の蝶々(武藤(十)・大森)
M10 . 記憶のジレンマ(谷口・中西・福岡・後藤)
MC2
M11 . 不器用太陽
M12 . 夏の前
M13 . ★Make noise
MC3
M14 . 君のために僕は...
ENCORE(外山氏が発動)
E01 . 10年桜
E02 . ★大人列車
E03 . ★混ざり合うもの
MC4
E04 . 風は吹いている
曲を見ていくと「夏」をテーマにしたものが若干多いような気もしますが全体を通して季節でのテーマ性はないと思っています。パズドラの話になりますが、ミネルヴァが火属性だということを鑑みるとこのチョイスも妙に納得できました。
まずですよ。なんなんですかあのカッコいいovertureは。全公演あれにしましょうよ(と、MCで湯本亜美さんも言っていました)。
序盤の4曲はとにかく【盛り上がり】に長けていたと思います。1曲目に「重力シンパシー」というのは既視感がありました。そうです、『SKEフェスティバル』です。あのときもイントロからすでにボルテージは上々。そしてそれを殺さぬまま「ゼロサム太陽」にてアツさに熱さを加えます。しかしながら、このテンションのままでさあ次はなんだと構えていると、ここで緩急をつけてくるのです。これまでとは打って変わって静かにはじまる「私たちのReason」ですが、それでもサビの頃には緩急に体も追いついてきて、この曲のもつ力強いながらもどこかさびしいメロディーに心打たれます。注目の4曲目もその系譜をたどるように「ラベンダーフィールド」にてあくまでここまで積み上げた盛り上がりを保ったまましだいに感動までもを与えてくれます。
「ラベンダーフィールド」のセンターは福岡聖菜さんだったのですが、彼女のパフォーマンスが僕はとても好きです。身体を大きく使ったダンスや表情の作り方がとても上手くてつい目が行ってしまうのです。今度の全握で初めてお話しようかなと思っています。
ユニットに関して、姉妹グループや坂道もそれなりに見てきている僕からすればこの選曲はかなりおトクでした。あと、意図があるのかはわかりませんが、このユニットのセトリ、後半の曲に行くにつれてだんだんとエロくなってませんか?(笑)
冗談はさておき1曲目は「コップの中の木漏れ日」で、この曲はオリメンのものを生で観ているのでより新鮮な感じがしました。久々にSKEオタ友とラブクレの談義ができてそれも楽しかったです。そしてやはりせいちゃんばかり見ていました。
次に「オフショアガール」。おいおいマジか、と。実はこの曲も神宮での全国ツアー2016にて白石麻衣さんが歌うものを聴いていたりします。今回は16期生4名のバックダンサー付きだったので違った楽しさがありました。真ん中で歌う市川愛美さんもそうですが、バックダンサーにいた武藤小麟さんもなかなか夏が似合いそうだなぁと観ていて思いました。
次の「夢でKiss me!」は上手の花道から向井地美音さんが登場。みーおんはコップだと思っていたのでここか、と。親衛隊と呼ばれる5人がサイリウムやケチャでみーおんを引き立てていました。これがあったからおもしろくなってたけど結構音外れてたと思います(小声)。
つづく「口移しのチョコレート」では湯本亜美さんの新たな一面が見られたと思っています。あとのお2人はこういう曲のイメージは少なからずあったのですがゆあみにはなかったので良かったです。なんだかんだ生で聴いたの初めてかも。
そして「おしべとめしべと夜の蝶々」ですね。この日SKE48劇場では『最終ベルが鳴る』が行われていたので、これを観ながら僕は「ああ今頃栄では古畑と江籠ちゃんがやってるんだなぁ」などと考えていました。以上です。
最後の「記憶のジレンマ」は谷口めぐさんのパフォーマンスが好きでした。先ほどせいちゃんは表情の作り方が上手だと記しましたが、おめぐはそれが丁寧なんですよね。それこそせいちゃんの後におめぐ見ると顔死んでるじゃないかと思うかもしれないんですけど、違うんですよ。上手く言えないけど。
この公演はユニットによってメンバーの新たな一面を見つけてもらおうという意図があったのかもしれませんね。そうだとしたら各グループからの幅広い選曲も含めてそれは大成功といえるでしょう。
さて、ここからは【魅せる】ことに重きを置いているように感じました。まずは「不器用太陽」で優しく入り、歌詞の世界観ごと「夏の前」にキレイに繋いでいきます。 アイドルっぽさをここで感じられたかな。そして次の「Make noise」のセンターを谷口めぐさんにしたのは本当に素晴らしい判断だったと思うんですよ。意外にも彼女はこういう曲で良い味を出してくれますね。『シアターの女神』を観たときには気づけなかったことです。
本編最後は「君のために僕は…」ということで「Make noise」と毛色が似ているような気はしますが埋もれてはいけない曲のひとつだと思うのでここで聴けて良かったと思います。そういえばここでみーおんがレスくれました。
アンコールではまず「10年桜」と「大人列車」を連続で、というかまるで一つの曲かのように(「大人列車」のイントロが食い気味に入る)使っていて、上からで大変恐縮ですが外山さん、わかってるなと。この2曲のMVはどちらも高橋栄樹監督によるもので、ストーリーもつながっていると考えて良いと思います。「大人列車」のサビでは振りコピを完璧にキメました。ここのセンターがさややだったのも大正解ですね。はるっぴの影を少し見た気がします。次の「混ざり合うもの」も埋もれつつある曲なので聴けて良かったと思います。乃木坂AKBの曲なのでそもそも披露する機会が極端に少ないのでこのような著名人公演で使うくらいしかないのがもったいない。本当の最後の曲は「風は吹いている」で、これは3.11震災復興応援ソングですね。しかしながらこの公演名が『ミネルヴァよ、風を起こせ』ということでラストを締めるのに適した曲だと思いました。
ところでミネルヴァといえばフクロウが連想されると思うんですね。そしてそれはヘーゲルの『法の哲学』の冒頭、「ミネルヴァの梟はまず、迫りくる黄昏とともにその飛翔をはじめる。」という記述によるところが大きいのでしょう。おそらく外山氏もこの言葉にちなんで公演名を決めたのだと思います。ここでフクロウに象徴される「哲学」というものは、現実という名の時代が成熟したあとで遅れてわかるようになるものだとヘーゲルは言いたかったのだと僕は考えます。では本公演名「ミネルヴァよ、風を起こせ」はどういうことかというと、「黄昏」というのは悲しいですがAKB48の現状を表す意図でしょう。坂道グループの台頭もあって人気の翳りはやはり否定はできなくて、それでもメンバーの皆さんや外山氏はまだまだやれるぞと、そういう意思の表れとして「風」という文言を盛り込んだのだと思います。「RESET」の歌詞が頭に浮かびますね。はっきり申しましてAKB48グループは全然終わってなんかいないと思います。新しい「風」すら吹き始めていると思っています。それを感じろというのも外山氏のメッセージでしょう。
この熱い思いの下、約2年間続いたこの公演。千秋楽を観に行けて本当に良かったと思いました。ありがとうございました。