恐怖さえ感じた

 12月23日、高柳明音さんのカレンダーお渡し会のために渋谷へ向かった。乗り換えが嫌いな僕は迷わず成田エクスプレスを選択するが、本題はそれではない。

 高柳明音さんは僕の初めての推しメンであるが、当時の自分は関東在住の小学生であり中学受験生であったため、握手会等に行ったことはなかった。いざ中学生になっても部活が忙しく全握に一度行ったくらいで、高校では坂道を上っていた(爆)。

 再びSKE48に目を向けたのは、世界選抜総選挙での菅原茉椰さんのスピーチに心惹かれたからだった。高校を卒業してお金にも時間にもゆとりができていたこの時期からSKEの個握や劇場公演に行くようになり、その過程で、あるいは茉椰さんの休養時期と重なって、太田彩夏さんに出会った。以降、このおふたりを推しメンとしてオタクの道を歩んできた。

 この2人の握手によく行くようになって思ったのは、2人とも記憶力が半端ないということ。菅原さんは連日開催だったトーク会の2日目に1日目の内容を覚えていてそれを踏まえた話題を提供してくれたり、太田さんは1ヶ月前の自身の生誕祭公演で僕が座っていた場所を言い当てたりと、驚かされる。

 個人的にはオタクの顔や名前を覚えることに脳の容量を使うくらいなら公演の新ポジ覚えるのに使ってほしいなんて思うほどなので、アイドルからの認知は別に要らないが、あちら側からするとひとつ上のステージにいくためには必要なスキルなのかもしれないし、だとすればメンバーで差はあれどある程度通えば自然と覚えてもらえるのだな、とも思った。高柳さんにもそういうオタ活ができたらどうなっていただろうかと考えることはあるが、小学生には現実的でないという結論に落ち着くので後悔などはない。

 では話をお渡し会に戻そう。この手のイベント、思ったより話す時間があるのだなと毎回思う。僕がノープランすぎるのがいけないんですけどね。反省はしません。今回も今回とて何も考えずに待機していた。今思えば舞台の感想など話すネタはいくらでもあった。でも何も考えていないので自分の番になると、会釈的な何かをしながら商品を受け取ろうと無言で手を差し出す。そして彼女からの第一声、

 

 

 

 

「え、ずいぶん久しぶりじゃない?」

 

 

 

 

 理解が追いつかなかった。アイドル時代にそこまで握手に行ったわけでもないし、KⅡ公演では太田彩夏の推しサイを振っていたし、知られるタイミングに心当たりがなさすぎた。おまけにこの日はマスクをしていた。動揺のままに去年のこのイベント以来だと伝えたが、そういえば去年は行けなかったので一昨年のお渡し会以来が正しかった。

 アイドルからの認知は要らないと思っていたはずだが、このときの僕にはうれしさが間違いなくあった。アイドルからの認知ではなくて女優からの認知ということで、その違いはきっとあるだろう。

 卒業後にもこうして会う機会があることに感謝しながら、彼女の出る舞台やドラマをこれからも観ていこうと思ったのであった。