初ミーグリを終えて

 日向坂46 5th「君しか勝たん」発売記念オンラインミート&グリートを終え、推しメンである松田好花さんと画面越しではあるが初めてお話しすることができた。日向坂の握手会(広義)に参加するのはこれが初めてだった(ひらがな時代に影山さんと握手したことはある)。何しろ僕が日向坂に興味を持ったのは2020年夏のことである。新参者もいいところだ。それにしても、第1次受付にして3枚応募して当選枚数が2枚という日向坂の現在の勢いたるや末恐ろしい。本記事ではミーグリに関連させつつ、僕の中で48と坂道のオタ活がどう棲み分けされているのかを整理しようと思う。

 まず書き手の立場を明確にしておくと、自分は現在秋元系列ではSKE48NMB48・日向坂46を主にウォッチしており、オンラインお話し会と握手会だったら間違いなく握手会のほうが良いという立場、広く言えば在宅派ではなく現場派である。この立場から以下の文章は展開される。

 そもそも48と坂道の握手会の違いを超ウルトラ乱暴に言ってしまうと「入場までの時間が2時間か2分か」の違いである。どっちがどっちなんて言うまでもない。そういえば、ひろゆきがMCに抜擢されたAKBの新番組のタイトルが、今まで抱えていた何かが振り切れたように強い主張をしている。現在の僕は推しメンのためとはいえ2時間以上も並ぶ気力も体力もない。それに「48の1枚は坂道の3枚」とよく言われてきた。単純にコスパが悪い。悪すぎる。まあ乃木坂一筋だった頃の僕(2015〜16)には並ばないという選択肢はなかったが、48の握手会の快適さを知ってしまったある日、「坂道の握手会」ではなく「坂道」ごとモチベーションが崩れ去ってしまった。つまりは、48と坂道を同時に推すということを、最近まで僕は感覚的に不可能だと決めつけていたのだ。

 そもそも48と坂道ではビジュアルの系統が違うように思う。「乃木坂はクラスで一番かわいい子の集まりで、AKBは5〜6番目の集まり」と誰かが形容していた。そしてこれは本当に僕の感覚による体験に過ぎないが、AKBにモチベをやると乃木坂のメンバーはさほどかわいいと思わなくなるし、逆もまた然りである。「『好き』の反対は『無関心』」という文句には好例ではないだろうか。

 以上のようなことから、同じアイドルを応援するなら、現場派としては坂道より48のほうが楽しめると判断し、モチベーションがどうこうというよりは、あるとき僕は坂道を切り捨てた。乃木坂は2期までしかわからないし、欅坂は平手さんの笑顔が素敵だった頃しか知らないし、ひらがなけやき...? あ、日向坂ってひらがなけやきのことなの!? といった具合であった。

 そんな僕が冒頭あるように今は日向坂にも傾倒しているのは、ドキュメンタリー映画がきっかけである。友人から勧められたために観に行き、予想外にハマってしまったのだ。映画観賞後、「ひらがな推し」と「日向坂で会いましょう」を全て視聴し、推しメンを松田好花さんに決めた。しかし現場に行く気は起きなかった(そもそもコロナ禍だが)。握手券だって1枚取れれば万々歳なグループの握手会に、金さえあれば券なんていくらでも積めるグループにふだん通っている身としてはどうにも行く気にはなれない。推しメンができ、一度話してみたいという思いはあるにせよ、だ。

 この、僕のなかの48と坂道の感覚的な違い(を無理やりシステムやビジュアルに原因を求めて処理した何か)を言語化できるようになったのは、日向坂と同時期に公開された欅坂のドキュメンタリー映画を観てからだった。なぜ観たのかはよく覚えていない。欅坂といえば激しいダンスが目を引く。映画でも当然ライブの映像が使われているが、これを映画館で観た瞬間に、欅坂、ひいては坂道の楽しみ方を知れた気がしたのだ。アリーナ席でメンバーと一体になってライブを盛り上げるのももちろん楽しいのだけど、こと坂道においては、映画館でのライブビューイングだったりDVDを見返したりして、一人一人の表情がはっきりと確認できる位置からじっくり観るという楽しみ方ができると思った。繰り返すが48オタとしての僕は、断然現場派である。劇場公演なんてのはその最たる例で、物理的な距離感が違う。劇場の最前に座ればメンバーの香水の匂いがするし、汗だって飛んでくる。しかし坂道には劇場公演がないし、人が多くて坂道現場を回避していた僕にとって、現場派でありながら現場に行かずとも楽しめる方法を見出せたのは大きい。

 以前の僕は、同じアイドルという括りで、同じプロデューサーということ、それゆえに握手会やライブのレギュレーションもほとんど変わらないことを口実に、48と坂道を同じカテゴリーに乱暴に突っ込んでいたのだ。それに気付いたいまの僕は、坂道を、アイドルはアイドルでもイメージ的には一昔前のアイドルという位置においた。テレビの中で輝いていて、僕たちにとってはリアルでは決して交わることのない存在であることにした。

 ならミーグリに参加したのは矛盾ではないかといわれれば、こればかりは何も言えない。しかしこの一回限りにするつもりだ。別に推しメンの対応に不満があったわけではない。素敵な30秒間だった。まあでも言ってしまえばお試しのような感じで推しメンだけ買っただけだし、いまの僕の決め事にしたがうと日向坂46というグループは気軽に会える存在ではないために、NMBで慣れているはずのオンラインお話し会も、推しメンが画面に現れた際に、どこか変な感じがしてしまったのだ。それに、推しメン補正もあってか松田好花さんは大丈夫だったが、48のノリで気になる日向坂メンバーの握手券を取ったときに、いまの僕は日向坂46を“崇高”とでもいえるようなところに位置付けているため、いざ話してみて期待外れというかコレジャナイ感を感じてしまったときが怖いとも思ってしまう。お試しなんて気軽な感覚で握手に行ってはいけない気がするのである。名前を出して申し訳ないがそういう意味ではやはりKAWADAさんなんかはひなあいを観て楽しむに留めておくのが僕にとっては正解な気がするのだ。